今さら聞けない!IPv4とIPv6の違いと移行の必要性について
こんにちは、スピーディア技術満足室です。
インターネットは私たちの日常生活やビジネスに欠かせないものとなっていますが、その基盤となっているのが「IPアドレス」です。そして現在、世界的にIPv4からIPv6への移行が進んでいます。今回は、IPv4とIPv6の違いを分かりやすく解説し、なぜこの移行が必要なのかについて説明します。
1.IPアドレスとは
IPアドレスは、インターネット上の各デバイスを識別するための「住所」のようなもので、データがどこからどこへ送られるべきかを示す重要な役割を担っています。昨今は、冒頭にも記載したとおり、長年使われてきたIPv4(Internet Protocol version 4)から、次世代規格であるIPv6(Internet Protocol version 6)への移行が世界的に進んでいます。
2.IPv4の基本と限界
・IPv4とは
IPv4は1983年に正式採用された、インターネットの基本プロトコルです。32ビットのアドレス空間を持ち、通常は「192.168.1.1」のように、ピリオドで区切られた4つの数字(0〜255)で表記されます。理論上は約43億(2³²)個のアドレスを提供できます。
・アドレス枯渇問題
インターネットの急速な普及と常時接続サービスへの移行、一人当たりの接続デバイス数の増加により、IPv4アドレスは2011年にIANAの中央在庫が枯渇し、2019年までに世界のほとんどの地域で新規割り当てが困難になりました。これは当初の設計時に、インターネットがここまで急速に普及するとは予想されていなかったためです。
・枯渇への対応策
IPv4アドレスの枯渇に対応するため、以下のような技術が導入されてきました:
– NAT(Network Address Translation): プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを変換する技術
– CIDR(Classless Inter-Domain Routing): IPアドレスをより効率的に割り当てる方法
これらの技術によってIPv4の寿命は延びましたが、根本的な解決にはなっていません。世界で新規割り当て可能なIPv4アドレス数は、数百万~1億個程度と言われてており、ほぼ枯渇状態となっています。
3.IPv6の登場と特徴
・IPv6の基本構造
IPv6は1990年代に開発が始まり、1998年に標準化されました。128ビットのアドレス空間を持ち、約340澗(340兆の1兆倍)個のアドレスを提供できます。これは地球上の砂粒の数よりも多いと言われています。
IPv4とIPv6のアドレス空間の違いを具体的に表すと下記になります。
– IPv4: 2³² = 4,294,967,296個(約43億)
– IPv6: 2¹²⁸ = 340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456個
IPv6については、桁を数えるのも大変なくらい果てしない数ですね・・・。この膨大なアドレス空間により、地球上のあらゆるデバイスに固有のアドレスを割り当てることが可能になります。
・アドレス表記の違い
IPv6アドレスは「2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334」のように、コロンで区切られた8つの16進数のグループで表されます。冗長な表記を省略するルールもあり、例えば連続する0のグループは「::」と省略できます。
4.IPv4とIPv6の主な違い
・アドレス形式と容量
前述の通り、IPv4は32ビット、IPv6は128ビットのアドレス空間を持ち、表記方法も大きく異なります。IPv6は16進数を使用することで、人間には読みにくくなっていますが、機械処理には適しています。
・ヘッダー構造の違い
IPv6はヘッダー構造がシンプル化され、固定長(40バイト)になりました。不要なフィールドが削除され、拡張ヘッダーという概念が導入されています。これにより、ルーターでの処理効率が向上しています。
・自動設定機能
IPv6では「ステートレス自動設定」という機能が標準で組み込まれており、DHCPサーバーがなくてもネットワーク接続時に自動的にアドレスを取得できます。これにより、特にIoTデバイスなど多数の機器を接続する場合の設定が大幅に簡素化されます。
・セキュリティ機能
IPv4では追加機能だったIPsec(IPセキュリティプロトコル)がIPv6では標準で組み込まれており、通信の認証と暗号化が容易になっています。
・パケット処理効率
IPv6はヘッダー構造の簡素化や不要な処理の削減により、ルーターでのパケット処理効率が向上しています。これにより、理論上はネットワーク全体のパフォーマンスが向上します。
5.移行方法と共存技術
IPv4からIPv6への移行は急速に進んでいると言えますが、すぐにできるものではありません。今後もしばらくは長期的に移行期間が必要となります。そのため、両方のプロトコルが共存するための技術が開発されています。
・デュアルスタック
デュアルスタック(Dual Stack)は、1台の機器やネットワークでIPv4とIPv6の両方のプロトコルを同時に搭載し、運用する仕組みです。通信相手に応じて適切なプロトコルが選択されます。多くの現代のOSやネットワーク機器はデフォルトでデュアルスタックをサポートしています。、IPv4からIPv6への移行期における最も現実的かつ広く使われている共存技術であり、1台の機器でIPv4とIPv6の両方を同時に利用できる仕組みです。これにより、両方のネットワーク環境に柔軟に対応しながら、段階的なIPv6移行が可能となります
・トンネリング技術
トンネリングは、IPv4ネットワーク上でIPv6パケットを送受信するための技術で、IPv6パケットをIPv4パケットの中にカプセル化(包み込むこと)して転送し、目的地で元のIPv6パケットを取り出して通信を続ける仕組みです。これにより、IPv6対応ネットワークがまだ整備されていない環境でも、IPv4インフラを利用してIPv6通信が可能になります。
・トランスレーション
IPv4アドレスとIPv6アドレスを相互に変換し、異なるプロトコル間での通信を可能にする技術です。代表例として「NAT64」や「NAT-PT」などがあります。これらの技術により、IPv4とIPv6の共存期間をスムーズに移行することが可能になります。
6.IPv6導入のメリット
・IoTデバイス拡大への対応
IoTデバイスの普及により、インターネットに接続するデバイスの数は爆発的に増加しています。IPv6の膨大なアドレス空間により、すべてのデバイスに固有のグローバルアドレスを割り当てることが可能になります。
・通信速度・品質の向上
IPv6は「IPoE方式」と呼ばれる新しい接続方式に対応しており、従来のIPv4で主流だった「PPPoE方式」と比べて混雑しにくく、通信速度が速くなりやすい傾向があります。これにより、より快適なインターネット利用が可能です。
・エンドツーエンド接続の復活
NAT(Network Address Translation)を使わず、デバイス間の直接通信(エンドツーエンド接続)が可能となります。これにより、ネットワーク構成やトラブルシューティングがシンプルになります。
・セキュリティ向上の可能性
IPsecの標準搭載により、通信の暗号化や認証が容易になります。また、グローバルアドレスの利用により、ネットワークの透明性が高まり、セキュリティ管理が容易になる側面もあります。
・ネットワーク管理の効率化
NATの複雑な設定が不要になり、アドレスの自動設定機能の強化により、ネットワーク管理の負担が軽減されます。また、ヘッダー構造の簡素化により、ネットワーク機器の処理負荷も軽減されます。
7.業界動向と展望
・世界各国の導入状況
IPv6の導入率は国や地域によって大きく異なります。
2025年5月17日時点で、GoogleへのアクセスにおけるIPv6利用率は48.14%となっており、他の主要な統計でも、2025年初頭の世界IPv6普及率は約43%と報告されています。この割合は2015年の約5%から大幅に増加しており、着実にIPv6の普及が進んでいることがわかります。
[IPv6 – Google]
同時点で日本は54.51%と、世界上位に位置していますが、フランスやドイツ、インドなどの国々と比べるとやや低い水準です。
・利用傾向の特徴
平日よりも土日や長期休暇時にIPv6利用率が高まる傾向があり、企業や学校などの法人接続は依然IPv4が多い一方、家庭用回線のIPv6対応が進んでいることがこの傾向を生んでいます。
・市場規模・背景
2024年時点でIPv6対応機器は414億台、2030年には1276億台に達する見込みで、IoTやスマートデバイスの普及が急速なIPv6導入を後押ししていると言えます。
・日本の主要プロバイダの対応状況
総務省の2023年度調査によれば、国内ISP事業者267社のうち57.3%(153社)がIPv6接続サービスを提供しており、IPv6はすでにスタンダード化しています。
現在の日本の主要プロバイダでは、従来のPPPoE方式に加え、より高速・安定な通信が可能なIPoE方式(IPv6ネイティブ接続)が広く普及しています。
8.まとめ
IPv4からIPv6への移行は、インターネットの継続的な成長と発展のために避けられない流れです。アドレス空間の拡大だけでなく、セキュリティの向上、設定の簡素化、パフォーマンスの改善など、多くのメリットがあります。
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